書店でふと目につき、パラパラとめくってみて、久しぶりに引き込まれた。
これはホンモノだ!!
躊躇なく買った日の夜、一気に読んだ。
存在の耐えられない愛おしさ
伊藤 亜和【著】
伊藤亜和さんという20代女性の初エッセイ集。
セネガル人の父親と日本人の母親の間に生まれ、現在は祖父母とともに横浜で暮らしている。私の勝手な想像だけど、本質的には激情型の人だと思う。むき出しのように見えて繊細で危うい。でも、強い。書くことで自分を炙り出そうとしているように見えた。
自分の内側から湧き出てくる言葉に蓋をさず、それでいて秩序のある世界感を確立している凄さ。誰にも似ていない自分だけの言葉がある。
家族、友だち、恋人との関係を綴った文章はどれも、静かで丁寧だ。感情に溺れず自分に酔わず、どこか俯瞰で見ているようなクールな独特な視点も個人的に好きだった。言葉が深くて鋭い。非常に洞察力にすぐれた書き手だと思う。
岸田奈美さんの文章をはじめて読んだ時も圧倒されたけれど、彼女とはまた違ったパンチのあるすごい書き手が現れたと思った。
若い女性がこうして活躍して世に出ていくのは、すごくうれしく頼もしい。突然、スポットライトが当たり舞台に引っ張り上げられる時ってあるんだな。もちろんそれだけの実力があってのことだけれど。
と、なぜか金の卵を発掘したプロデューサーのような気分で読んでいた私。(なにさま⁉笑)
もちろん書籍化されているのだから、私の知らないところで多くのファンがいるのだろうとは思っていたが、後から知ったのだが、糸井重里さんやジェーン・スーさんがすでに取り上げ、絶賛していた。ほぼ日で糸井さんと対談までしているではないか。この本の巻末にはジェーン・スーさんとの対談もあり、買うときには気にしてなかった帯に、錚々たるメンバーが推薦コメントを寄せていた。そうか、すでにここまできてる人だったのか(笑)
私が心配する要素は1ミリもないが、伊藤亜和さんにはこのままずっと文章を書き続けていってほしいし、これからどんな風に変わっていくのかを見てみたい。老後の楽しみがまたひとつ増えた。