気がつくと、桜が咲いていた。
私の住む町で山林火災が発生してから、今日で1週間。
現在、煙は上がっておらず、上空からの確認でも山肌に高温の熱源は見当たらないとのこと。鎮圧に向けた最終段階の消火活動が進められており、ようやく一安心といったところだ。
消火活動にあたる消防の皆様、電気・ガス・水道といったインフラを支えてくれている方々、自治体や関係者の皆様には、感謝の気持ちでいっぱいだ。おかげでこうして無事に過ごせている。本当に本当にありがとうございます。
私の職場は火災現場に比較的近く、幸い短時間の停電以外に直接の被害はなかったものの、煙が上がる山の様子が屋上から見えて、恐怖を感じた。飛び火の被害にも驚かされた。山からかなり距離があるにもかかわらず、国道を越えて住宅街に燃え移るなんて。
社員の中には避難指示区域に入っていた者も数名おり、中にはあと少しで家が燃えるかもというギリギリの状況だった人もいる。
ひっきりなしに消防車がサイレンを鳴らしながら走る。あんなに多くの消防車や救急車を見たのは人生で初めてだった。スマホには緊急避難勧告の通知が次々と届き、落ち着かない日々が続いた。
そんな中、ふと気づくとソメイヨシノが咲いていた。
暖かくなってきたのは感じていたけれど、心が春を迎える余裕なんてなかった。だからこそ、桜の花を見たときは驚いた。え?いつの間に……?
今日は、祖母の十七回忌の法要を執り行った。祖母の葬儀の日も満開の桜で、舞い散る花びらの中、火葬場へ向かったことを思い出した。花が大好きだった祖母を桜が見送ってくれたような気がした。午前中、お寺で法事をすませ、少しだけ心に余裕ができたので、午後から近所の公園を散歩した。
桜は満開とまではいかないものの、九分咲きくらい。ひさしぶりに、ほんの少しだけ穏やかな気持ちになれた気がする。来週からまたがんばろう。