ゴールデンウイーク、1泊2日で香川へ行った。
目的は、瀬戸内国際芸術祭2025。
仕事で4月に取材に行ったのだが、その原稿執筆が終わってもずっと気になっていた場所があった。
取材対象ではなかったが、機会があれば個人的に訪れたいと思っていた。
高松から30分ほどの離島「大島」である。
大島にある「大島青松園」は、全国に13箇所ある国立ハンセン病療養所の一つで、島全体が療養所になっている。
ハンセン病とは「らい菌」が主に皮膚と神経を犯す感染症で、感染し発症すると手足などの末梢神経や皮膚や目などに障害を引き起こす。外見にわかりやすく病気による変化が起きることで、世界中で差別や偏見の対象となり、様々な人権侵害を生み出してきた。
ハンセン病の感染力は極めて低く、また感染しても発症することはめったにない。治療法が確立された現代では完治する病気であり、予防や消毒などの特別な対策は必要はない。
1931年(昭和6年)、当時でも厳しい隔離などは必要なかったにも関わらず、誤った知識による偏見のもと、ハンセン病患者を隔離の対象とし、生涯施設に入所させる「らい予防法」が制定された。
1920年代から1950年代にかけて日本全国で行われた「無らい県運動」は、県内にハンセン病患者がいない「無らい県」を実現することを目的に、患者を強制的に隔離収容する運動である。官民一体となり患者を摘発し強制的に療養所へ送り込んだ。この運動が、ハンセン病を恐ろしい伝染病と誤解し、患者を社会から排除することで、患者の社会的な居場所を奪い、人権侵害につながったとされる。
朝一番の船に乗り、大島へ向かう。船内はマスク着用で私語厳禁。
30分ほどで島に到着した。島内には立ち入り禁止エリアも多くある。元患者の方が現在も生活されているのでプライバシーを保護するという点でも、注意事項は細かくあった。
芸術祭のボランティア「こえび隊」の方の案内で各施設を見学させてもらった。とてもわかりやすく、きちんと説明を聞いてよかったと思った。案内の掲示物はあるが、読むだけとは理解の深さが全然違う。30分ほどこえび隊さんのガイドツアーに参加し、そのあとは、解散して各自アート鑑賞エリアを見てまわった。アート作品も素晴らしかったが、書くとめちゃくちゃ長くなるので割愛(笑)
「らい予防法」が1996年(平成8年)に廃止されるまで、ハンセン病患者を見つけ出しては療養所に隔離・強制収容するということが行われてきた。1996年、つい最近の出来事だ。そのことにまず驚いた。ほんの30年前まで、強制隔離が続いていたのだ。まったく知らなかった…。
大島青松園の周辺の道路には、盲人の方が歩く頼りに道の真ん中に白いラインが引かれていたり、各所で音楽が流れていたりする。この島ではどこにいても美しい瀬戸内海の風景が目に入る。平和でのどかな島だった。その美しさ、穏やかさがかえって切なかった。
帰りの船の中、隔離・差別・偏見。新型コロナウイルスが全く未知のものだった時に感じた恐怖を思い出した。
今は忘れかけているが、感染者がごく少数だった頃、感染者の勤務先やその人物がどんなルートで通勤していたかまでを全国ニュースで放送していたのだ。私の地元ではビラをまかれたという事件まであった。2020年でも変わっていない。未知の恐怖は、簡単に人を変えてしまう。
私も他人事ではない。自分にも差別意識はある。だからこそ、知ること。正しく知り、それを伝えていくことを続けていきたいと思う。