光文社の『ビジネス・ゲーム 誰も教えてくれなかった女性の働き方』という本を読んだ。
コラムニストのジェーン・スーさんがたびたびおすすめされていたし、文庫本のあとがきを勝間和代さんが書かれているということもあり、なんかこれはかなりの説得力がありそう!という気がしていた。
読んでみて、まさに目からうろこ!
もっと早く、20代の頃に知りたかった。50過ぎてこのことを知ったところで、どうなるのか?とも思うが、私もあと数年は会社勤めをするわけで、もし今の会社を辞めたとしても、報酬が発生する何らかの仕事には就くだろうから、間違いなく今後の人生の役に立つといえる。
これまで、「ビジネスはゲームである」という視点は私にはなかった。
仕事とは“誠実に頑張れば報われるもの”だと、心のどこかで信じている部分があった。もちろん、そうではない事例はたくさん見てきたし、泥臭い出世争いやら派閥闘争やらも目にした中で、若い頃ほど青臭く信じてもないけれど、それでもそういう世の中であってほしい、という願いも込めて。でも著者は、そうではない、という。仕事には見えないルールがあり、そのルールを知らないまま戦っても勝てない、と語る。これは衝撃だった。
さらに印象的だったのが、「会社は軍隊と同じ」「女性が居心地の悪さを感じるのは、能力ではなくルールを知らないせい」という指摘。
①ビジネス社会は軍隊のようなピラミッド組織になっているが、女性はそれに慣れていない。
②会社の仕事はチームプレイのゲームだが、女性はそこでどうするかというルールを教えられていない。
③男性中心のビジネス社会は、女性を文化的に排除するようにできている。
男性は子どもの頃から野球やサッカーなどのスポーツを通じて、競い合うことや対人関係の中でのふるまい方を自然に身に着けていくが、女性はおままごとや人形あそびなど、みんなで仲良く公平に遊ぶことが一般的で、競争やゲーム性の高いことに夢中になることはよしとされていなかった。
そんな「組織ゲームのルールを知らない」女性が、社会人になって男社会である組織のゲームにいきなり放り込まれても、勝てるはずがない。邪魔もの扱いされるし、嫌がられる。結局は男性社員の補助や事務仕事、表には出ない裏方をこなす役割を求められる。
私は社会人になってからずっと、会社では女性の方が優秀だと思ってた。男性社員よりも仕事ができて、頑張り屋さんの女性社員をたくさん見てきた。それでも、彼女たちは昇格も昇進もなく、そのことがなぜか「やる気がない」とされポンコツ男性社員のサポートに徹している。こんな男性社員を立てる必要があるのか?という腹立たしさも若干感じていたし、ここにいる女性だけで会社を作った方がよっぽど利益が出るんじゃないかとも思っていたが、それは私がビジネスゲームのルールを知らなかったせいだ。
今まで自分に足りないのかもと思っていた数々の違和感が、一気に言語化されたようで胸が軽くなった。
ただの処世術ではなく、どうしたら自分の人生を自分で切り開けるのかを教えてくれる——そんな強さのある本。男女平等と意気込んでも、男社会のルールは変わらず。ならば、しなやかにそのルールを泳ぐのが賢いやり方だろう。
読後、職場の空気の見え方が変わった。“ゲームのルールを知っている側”に、少しだけ足を踏み入れられた気がする。昇格したいとかしたくないとかはまた別の話で、「会社で働く姿勢」を知れたのは大きな報酬だった。
この本『ビジネス・ゲーム』がアメリカのベティ・L・ハラガンによって書かれたのが1977年。日本で翻訳版が出版されたのが1993年。そんな昔の本なのに、今でも「昔ながらの男社会の会社」では普通にあることだというのが、切ない。
これから働く上で何度も読み返したい一冊。
自分らしい働き方を模索するすべての人に、そっと手渡したい。

