タコ焼き

思うこと

長年お世話になった取引先の店主が急逝した。
土曜の夜に訃報が入ったので、夜から朝にかけてバタバタと仕事関係に連絡をして、翌朝個人的にお悔やみの電報を手配した。
突然の訃報にショックのあまり何もする気が起こらず、日曜日は予定していた用事をとりやめ、休んだ。
ずっと「休むとは?」「どうやったら休めるのか?」を人生のテーマのように考えていたが、そうか、こういうことがあれば休めるのか、と不思議な気分ではある。

一日中故人を思い出していた。店に行くと必ず厨房から出てきて、とっておきのおいしいケーキを食べさせてくれた。「どうだ?うまいだろう?」と、どや顔で。
あのおいしいケーキやお菓子がもう食べられないのかと思うと悲しすぎる。今年のクリスマスもベラベッカを楽しみにしていたのに。

朝、私はフワフワのパンケーキを焼いた。卵白を泡立てて、フワフワの生地を作り、ホットプレートで蒸し焼きにする。一応できたが、想像以上に難しく、ぜんぜんキレイにできなかった。味も、まあ、うん、パンケーキですね・・・という感じだった。薫さん、パンケーキ難しいよ。

昼はよく行く自然食堂で玄米のランチプレートを一人で食べ、温泉につかり、紅葉を見て帰ってきた。今日はやるべきことがたくさんあったが、そんなことはどうでもよくなり、急に死んでも後悔しないようにしよう、とサウナに入りながらぼんやり考えていた。最期はどんなことを感じていたんだろう。死ぬとは思わなかっただろうな。今頃「あれ?俺、なんでここに??」って思ってそう。

帰宅後、朝パンケーキを焼いたホットプレートのプレートを変えて、タコ焼きを焼いた。ひたすらタコ焼きをクルクルひっくり返していると、またいろんなことを思い出して泣けてきた。
別れは突然にやってくる。後悔しないように、そばにいる人を大切に、今は両親との時間を大事にしようと、父と母とタコ焼きをハフハフ言いながら食べた。ご冥福をお祈りします。