ご自由にどうぞと言われましても

日々

バターナッツという品種のかぼちゃをご存じだろうか。
ひょうたんのような形をしていて、30センチほどの長さ、知らなければかぼちゃとは思わないようなビジュアルである。味は、その名からも想像できる通り、甘く濃厚、ねっとりとしていてクリーミー。水気が多いのか和風の煮物にはイマイチ合わないのだけど、ポタージュとかバターソテーなど洋風の料理にはバッチグーである。かぼちゃプリンとかケーキとかアイスとか、お菓子にもよく合う。要するに、洋風がお似合いのかぼちゃなのである。

数年前から父がそのかぼちゃを育てているのだが、これが今年大豊作で、毎日あほみたいに採れる。1本でもかなりデカいので、使いきれないのに毎日どんどん増えていく。ご近所さんや友人知人に配ってもまだ余る。

しかも残念なことに、和風の煮物には合わないため、年配の人には不人気の様子。ターゲットを変え若い主婦に「これでかぼちゃのポタージュとかプリンとか作ったらおいしいよ」とあげようとしたが、そんな手の込んだものは作らないと言われたのだとか。あと、若い人はかぼちゃの皮をむくのが嫌なんだって。硬いから?わからんでもない。たしかにトマトやきゅうりをおすそ分けするよりもハードルが高い。

そんなわけで、処分に困った母は思いもよらない行動に出た。

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軒先で、自由にお持ち帰りください作戦、である

そこらへんにあったもので台をつくり、発泡スチロールのふたにマジックで「ご自由にお持ち帰り下さい」と書き、なぞの立て看板を自作。出かけようと玄関を出て、これを見たときはわが目を疑った。

我が家の前の道路は、町内では比較的人通りが多い方だが、ほとんどが車かバイクだ。素通りしてしまうので、当然だけれども誰も気づかないし持って帰らない。そもそも、怪しすぎる。

時間帯もあるだろうし、これは長期戦になるなと思っていたら、2時間ほどでしびれを切らした母は、その時たまたま通りかかった知人をつかまえ、「持って帰って!!」とこの箱ごと渡したのだそうだ。

その方は、娘さんにお菓子作りの趣味があり、かぼちゃのケーキを作りたいと言っていたそうだ。獲物を見つけた母はこれ幸いとばかり、「全部あげた」という。なんとも迷惑な…。

その方も処分に困っているだろう。お菓子作りが趣味と言っても2本もあれば十分だ。その後のかぼちゃの行方はだれも知らない。
どこかのご家庭で幸せな食卓にのぼっていたらいいのだけれど。